大口径ダイアフラムのコンデンサーマイクは、スタジオでの繊細な収音に特化した設計が多くなります。SHURE SM27は逆に、「ステージでもスタジオでも同じように使える」ことを最初から狙った機種です。
理由は3つです。
1. 自己ノイズが9.5dB(A)と低い。 数値が小さいほど、マイク自体が生み出すノイズが少ないということです。小さな声のハーモニーや、静かなアコースティック楽器の収音でもノイズが目立ちにくくなります。
2. 亜鉛合金ハウジングと内部ショックマウントで頑丈に作られています。 本体重量642gという実測の重さは、取り回しの負担になる一方で、ステージでの振動や取り扱いに耐える構造の裏返しでもあります。
3. 15dBパッドと3段階のローカットフィルターを備えています。 大音量のドラムやギターアンプから、至近距離のボーカルまで、設定を切り替えるだけで対応範囲を広げられます。
比較の軸は3つです。
SM27はこの3つを満たす代わりに、軽量さや繊細な質感を最優先する機種ではないという割り切りをしています。
Shure公式の仕様書に記載されている数値です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 型式 | コンデンサー(外部バイアス型) |
| 指向特性 | カーディオイド(単一指向性) |
| 周波数特性 | 20Hz〜20,000Hz |
| 感度 | -37dBV/Pa(1kHz、開回路電圧) |
| 自己ノイズ | 9.5dB(A) |
| 最大SPL | 133dB(1000Ω負荷、パッドON時147dB)/138dB(2500Ω負荷、パッドON時152dB) |
| ダイナミックレンジ | 123dB(1000Ω負荷)/128dB(2500Ω負荷) |
| 出力インピーダンス | 150Ω(実測140Ω) |
| 電源 | +48Vファンタム、5.4mA |
| 外形寸法・質量 | 直径53.0mm×全長156.2mm・642g |
効いてくる項目を訳します。
自己ノイズ9.5dB(A) — マイクを無音の環境に置いたときに、マイク自体が生み出す等価的な音圧レベルです。数字が小さいほど静かで、静かなアコースティック楽器やハーモニーボーカルのような繊細な音源でもノイズが気になりにくくなります。
最大SPL 138dB(パッドON時152dB) — マイクが歪まずに受け止められる音圧の上限です。パッドをオンにすれば、ドラムのオーバーヘッドや大音量のギターアンプの至近距離でも歪みにくくなります。自己ノイズの低さと最大SPLの高さを両立している点が、この機種が「万能機」と呼ばれる理由です。
質量642g — 一般的な大口径コンデンサーマイク(300〜400g台が多い)と比べて重い部類です。軽量なデスクトップ用シザーアームでは垂れ下がる可能性があるため、しっかりしたマイクスタンドやブームアームでの運用が前提です。
3段階のローカットフィルター — フラット、80Hzで18dB/octカット、115Hzで6dB/octロールオフの3段階です。80Hzカットは空調や床の振動対策、115Hzロールオフは近接効果(マイクに近づくほど低音が強調される現象)の補正に使い分けます。
15dBパッドは、信号レベルを周波数特性を変えずに下げる機能です。 ドラムやホーン、大音量のギターキャビネットのような音源にマイクを近づけても、プリアンプ側で歪む前にマイク側で信号を下げられます。
3層メッシュのグリルが、内蔵ポップフィルターとして機能します。 息が当たる破裂音や風のノイズを、外付けのポップガードなしである程度軽減します。ただし、至近距離でのボーカル収録では別途ポップガードが必要になる場合があるとShure自身が案内しています。
内部ショックマウントで、取り扱いやスタンドからの振動ノイズを抑えます。 マイク本体を手で動かしたときのゴソゴソという音や、スタンドを伝う振動を軽減する構造です。
国内正規品はSM27-SC-Xという型番で流通しています。 付属品としてShureLockゴム製ショックマウント(A27SM)とベロア製ポーチが同梱される構成で、国際版のSM27-SC(ブラックスイベルアダプターA32Mと収納バッグA32ZB付属)とは付属品が異なります。なお、Shureの製品ガイドページでは基本形のSM27自体が「生産終了」と案内されていますが、国内正規代理店の完実電気ではSM27-SC-Xとして新品の取り扱いが続いています。在庫状況に左右されるため、欠品時は後述の代替機も検討候補です。
| ストア | 税込 | 状況 | 購入 |
|---|---|---|---|
| 楽天市場 | ¥68,566 | 2026.10.12 取得時点の実売価格(愛曲楽器・SM27-SC-X ショックマウント付) | 楽天市場で見る |
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SM27が唯一の正解ではありません。用途によって選ぶべき機種が変わります。
| 機種 | 税込 | 向いている人 |
|---|---|---|
| audio-technica AT4040 | ¥39,600最安 | 予算を抑えつつ癖の少ない特性を求める人。SM27より軽量で扱いやすい |
| RODE NT1(第5世代) | ¥50,599 | 自己ノイズの低さを最優先したい人。カタログ上の低ノイズ競争ではSM27を上回る |
| AKG C414 XLII | ¥132,800 | 指向性を録音ごとに切り替えたい人。9段階の切り替えで用途の幅がさらに広がる |
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分かれ目は「頑丈さと汎用性を取るか、それとも軽さや指向性の柔軟さを取るか」です。予算を抑えて軽量なマイクが欲しいならAT4040、自己ノイズの低さをスペックで比較したいならNT1、指向性の切り替えまで欲しいならC414、という並びになります。SM27はステージでの耐久性とスタジオでの静けさを両立させたい人向けの選択です。
Podcastageのレビューでは、輪郭がはっきりして前に出る音だと評価され、ボーカルを鮮明に捉える能力の高さが紹介されています。300ドル以下の価格帯で検討すべき万能ボーカルマイクの1本として推奨される一方、エレキギターのアンプ収録にはあまり向かないとも述べられています。自己ノイズの低さ(9.5dB)は複数のレビューで共通して評価されており、ハーモニーボーカルや静かなアコースティック楽器との相性の良さにつながっています。
一方で評価が割れているのが高域の質感です。ある測定ベースのレビューでは、低域から5kHz付近まではほぼ平坦で、6〜10kHzにわずかなプレゼンスの持ち上がりがある程度だとされ、臨床的なまでの正確さが特徴だと結論づけています。対して別の比較記事では、高域がやや明るく歯擦音が目立ちやすいという印象が語られており、測定上は中立的でも聴感上は明るく感じるという食い違いが見られます。歯擦音が強い声質の人は、購入前に試聴するか、後述の代替機と聴き比べることをおすすめします。重量642gについても、軽量なデスクトップ用シザーアームでは垂れ下がる可能性があるという指摘があり、しっかりしたスタンドでの運用が前提になります。
楽天レビューはこの記事の時点でまだ蓄積がありません。総じて、自己ノイズの低さと頑丈さは一致した評価がある一方、高域の質感については聴く人や比較対象によって印象が分かれる機種だと言えます。
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