Electro-Voiceの RE320は、放送用マイクの定番であるRE20の技術を受け継ぎながら、価格を抑えて登場したダイナミックカーディオイドマイクです。RE20との一番の違いは、本体側面のスイッチで周波数特性を切り替えられる「デュアル・ボイシング・スイッチ」を搭載している点です。
このマイクが選ばれる理由は3つです。
1. スイッチ1つで用途を切り替えられる。 左側のポジションはキックドラム用に補正されたカーブで、低域の緩みを削りながらアタック感を強調します。右側のポジションはボーカルや楽器向けのフラットに近いカーブです。
2. Variable-D構造による近接効果の抑制。 RE20と同じ技術で、マイクに近づいても低音が過剰に持ち上がりません。距離が安定しない収録でも音色の破綻が起きにくくなります。
3. 感度の高さでゲインに余裕を持てる。 公式データシートの感度は2.5mV/Pascalで、同社のRE20(1.5mV/Pascal)より高い数値です。ゲインを控えめに設定してもレベルを確保しやすく、プリアンプ側のノイズが乗りにくくなります。
ただし構造上の前提は他のダイナミックマイクと同じです。RE320はXLR接続のダイナミックマイクで、USB接続はできません。 マイクプリアンプかXLR入力を持つオーディオインターフェイスが別途必要です。
比較の軸を先に決めます。
Electro-Voice公式データシートの記載です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| マイク方式 | ダイナミック型(ムービングコイル) |
| 指向性 | カーディオイド |
| 周波数特性 | 30Hz〜18,000Hz(キックカーブ)/45Hz〜18,000Hz(一般カーブ) |
| インピーダンス | 150Ω(バランス) |
| 感度(開放電圧・1kHz) | 2.5mV/Pascal |
| ハムピックアップレベル | -130dBm(60Hz・1ミリエルステッド磁界、標準値) |
| 極性 | ピン2がピン3に対して正極性(振動板に正圧時) |
| ケース素材 | スチール |
| 仕上げ | セミグロスブラック |
| 外形寸法 | 全長216.7mm・最大径54.4mm・本体径49.2mm |
| 正味重量 | 681g |
| 付属品 | スタンドクランプ81715 |
| 別売品 | ウィンドスクリーンWSPL-2、ショックマウント309A |
数字のままでは判断できないので、効いてくる項目を訳します。
感度2.5mV/Pascal。 同社のRE20(1.5mV/Pascal)より高い出力です。ダイナミックマイクの中では比較的出力が大きく、ゲインを控えめに設定してもレベルを確保しやすくなります。
周波数特性が2種類ある。 キックカーブは30Hz〜18,000Hz、一般カーブは45Hz〜18,000Hzです。低域の下限が違うのは、キックカーブがバスドラムの基音域をあえて広く扱う設計のためです。
ハムピックアップレベル-130dBm。 電源由来のハムノイズをどれだけ拾うかの指標で、RE20と同水準の遮蔽性能です。パソコンやモニターの近くに置く配信環境でも扱いやすくなります。
正味重量681g。 RE20(737g)よりわずかに軽量ですが、手持ちで使う重さではありません。ブームアームやマイクスタンドへの固定が前提です。
公式のArchitects' and Engineers' Specificationsによれば、2つのカーブは次のように作られています。
キックカーブ(左ポジション)。 30Hz〜18,000Hzの帯域を扱い、125Hz付近をわずかに持ち上げ、380Hz付近を-4.5dB削り、2,800Hz・4,200Hz・7,200Hzに追加のピークを作ります。低域の緩みを削りながら、アタック感を強調する構成です。
一般カーブ(右ポジション)。 45Hz〜18,000Hzの帯域で、4,000Hzまではほぼフラット、4,200Hzでわずかに-2dB、5,000Hzに向けて+4dB持ち上げ、7,200Hzで一旦平坦になったあと10,000Hz付近で再び+4dB持ち上がります。声や楽器を前に出しつつ、癖の少ない特性です。
ハムバッキングコイルと一体型ブラストフィルター。 RE20・RE27N/Dと同じハムバッキングコイル技術で、電源由来のノイズを抑えます。マイク先端の一体型ブラストフィルターは風防と吹かれ対策を兼ねながら、内部素子のショックマウントとしても機能します。
| ストア | 税込 | 状況 | 購入 |
|---|---|---|---|
| 楽天市場 | ¥86,300 | 2026.10.19 取得時点の実売価格 | 楽天市場で見る |
| Amazon | リンク先で確認 | 「Electro-Voice RE320」での検索結果を開きます | Amazonで見る |
| サウンドハウス | リンク先で確認 | 「Electro-Voice RE320」での検索結果を開きます | サウンドハウスで見る |
価格は日々動きます。購入前に、表のボタンから最新の価格をご確認ください。JANコードは楽天の商品ページに記載が無く確認できなかったため、Amazonは型番での検索結果としています。
RE320が唯一の正解ではありません。用途の広さと価格で答えが変わります。
| マイク | 税込 | 向いている人 |
|---|---|---|
| Electro-Voice RE20 | ¥192,500 | 切り替えスイッチより、汎用カーブ1本で音の一貫性を保ちたい人。詳しくはRE20の単体レビューで解説しています |
| SHURE SM7B | ¥61,050 | 放送・配信用途中心で、価格を抑えた定番機を選びたい人 |
| AKG D112 MKII | ¥32,800最安 | キックドラム収録に特化し、ボーカル用途は他のマイクに任せられる人 |
(SM7B・D112 MKIIは2026.09.29、RE20も同日時点の楽天市場での実売価格)
分かれ目は用途の広さです。汎用カーブ1本に絞って音の一貫性を優先するならRE20、放送・配信用途で価格を抑えたいならSM7B、キック専用と割り切るならD112 MKII、ボーカルとキックの両方を1本でまかないたいならRE320という並びになります。RE320とRE20の価格差はおよそ10万円あり、この差の大半はスイッチによる汎用性ではなく、RE20の側の高い作り込みと定番としての実績に対する価格です。
海外のGearspaceフォーラムでは、RE320はRE20の廉価版として扱われつつも、感度の高さゆえに得られるノイズの少なさが評価されています。ゲインを控えめに設定できるぶん、プリアンプ由来のノイズが乗りにくいという指摘が複数あります。キックドラム用途では、大人数の会場でイコライザーをほとんどかけずにキックの存在感を出せたという投稿があり、キックカーブの実用性を裏付けています。ポッドキャスト収録を専門に扱うThe Audacity to Podcastのレビューは、SHURE PR40と比較したうえで、RE320のほうがより正確で自然な音を再現すると評価しています。
一方で不満点も指摘されています。Gearspaceでは、キックドラムに近づけて使う際に本体が振動を拾う「コンタクトノイズ」に敏感だという報告があり、設置時のマウント方法に注意が必要だという声があります。背景のノイズがやや金属的に聞こえるという指摘も一部に見られます。RE20と比較すると、切り替えスイッチによる用途の広さと引き換えに、単一カーブに絞ったRE20ほどの音の一貫性は薄れるという見方もあります。
実務的には、ボーカルとキックドラムの両方を1本でカバーしたい人に向く一方、キック専用の音を安定して出したいなら、振動を拾いにくいマウントの工夫を見込んでおくのが無難です。
価格は楽天市場の商品検索から取得しました(2026.10.19時点)。
評判の参照元: