配信・ポッドキャストの定番マイクSHURE SM7Bには、長年ついて回った弱点があります。感度が低く、多くの入門〜中位クラスのオーディオインターフェイスでは音量が足りないという問題です。SM7dBは、この弱点にマイク側から答える製品です。SM7Bの音を保ったまま、本体にプリアンプを内蔵しました。
選ぶ理由は3つです。
1. +18dB・+28dBを切り替えられる内蔵プリアンプ。 Shure公式によれば、内蔵プリアンプは低ノイズでフラットな特性を保ったまま、最大+28dBまでのゲインを透明感のある音質で供給します。ゲイン不足のオーディオインターフェイスでも、Cloudlifterのようなインラインブースターアンプを別途購入せずに必要な音量を確保できます。
2. バイパススイッチでSM7Bの出力にも戻せる。 プリアンプを無効化するスイッチがあり、ギターキャビネットやスネアドラムのような大音量の音源を収録する際は、SM7B本来の出力レベルに戻せます。用途によって使い分けられる設計です。
3. SM7B譲りの遮蔽性能とポップフィルターを継承。 電磁ハムノイズへの遮蔽性、内蔵ポップフィルター、背面の周波数特性切り替えスイッチ(ベースロールオフ・プレゼンスブースト)は、SM7Bと共通の設計です。音そのものの評価軸はSM7Bから変わりません。
ただし前提条件が1つあります。プリアンプの動作には+48Vのファンタム電源が必須です。 Shure公式も、プリアンプを動作させるにはインターフェイスやミキサーからの+48Vファンタム電源供給が必要だと明記しています。ファンタム電源を供給できない機材では、プリアンプ機能自体が使えません。
比較の軸を先に決めます。
Shure公式ページの記載です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| マイク方式 | ダイナミック型 |
| 指向性 | カーディオイド(単一指向性) |
| 周波数特性 | 50Hz〜20,000Hz |
| 内蔵プリアンプゲイン | +18dBまたは+28dB(切り替え式)、バイパススイッチあり |
| プリアンプの電源 | +48Vファンタム電源必須 |
| 周波数特性切り替え | ベースロールオフ、プレゼンスブースト(ミッドレンジ強調) |
| 遮蔽性能 | 電磁ハム・ノイズに対する遮蔽性を強化(コンピュータ・モニター由来の放送干渉を抑制) |
| ショックアイソレーション | エアーサスペンション式 |
| 同梱品 | クローズトーク用ウインドスクリーン、3/8"スレッドアダプター |
| 接続 | XLR |
数字のままでは判断できないので、意味を訳します。
プリアンプゲイン+18dB/+28dB — SM7B単体で不足しがちな音量を、マイク側で底上げする数値です。海外レビューでは、コンデンサーマイク並みの入力レベルまで持ち上げたい場合は+18dB、ポッドキャストや静かな声を収録する場合は+28dBを使う、という使い分けが紹介されています。
周波数特性50Hz〜20,000Hz — SM7Bと同じ数値です。プリアンプの有無にかかわらず、マイク自体の音の傾向はSM7Bから変えていません。
+48Vファンタム電源必須 — ダイナミックマイクとしては珍しい要件です。多くのダイナミックマイクは電源なしで動作しますが、SM7dBは内蔵プリアンプのためにファンタム電源を要求します。電源を供給できないミキサーやレコーダーでは、プリアンプ機能を使えません。
背面の周波数特性切り替えスイッチ。 フラット・ベースロールオフ(低音ハムを抑える)・プレゼンスブースト(中音域を持ち上げ声の明瞭感を上げる)を切り替えられます。SM7Bと同じ操作系です。
エアーサスペンション式のショックアイソレーション。 デスク上での操作音やケーブルの取り回しによる振動音を拾いにくい構造です。
クローズトーク用ウインドスクリーンが標準同梱。 近接して話す用途向けのウインドスクリーンが付属し、吹かれ対策を追加購入せずに始められます。
これらはSM7Bのために作り込まれた設計をそのまま受け継いだ部分です。SM7dBで新しく追加されているのは、内蔵プリアンプとそのバイパススイッチだけと考えて差し支えありません。
| ストア | 税込 | 状況 | 購入 |
|---|---|---|---|
| 楽天市場 | ¥73,920 | 2026.10.12 取得時点の実売価格(本体単品) | 楽天市場で見る |
| Amazon | リンク先で確認 | JAN 0042406756860 での検索結果を開きます | Amazonで見る |
| サウンドハウス | リンク先で確認 | 「SHURE SM7dB」での検索結果を開きます | サウンドハウスで見る |
価格は日々動きます。購入前に、表のボタンから最新の価格をご確認ください。カタログ記載価格と実勢価格に開きがあったため、本体単品出品の相場を複数店舗で確認しています。アームスタンドやケーブルとのセット品・交換用ウインドスクリーン単体は今回の価格調査から除外しています。
SM7dBが唯一の正解ではありません。ゲイン環境と予算次第で答えは変わります。
| マイク | 税込 | 向いている人 |
|---|---|---|
| SHURE SM7B | ¥60,940 | 60dB以上のゲインを確保できる機材がある、またはブースターアンプの追加購入が苦にならない人。詳しくはSHURE SM7Bの単体レビューで解説しています |
| SHURE MV7+ | ¥47,000 | USB接続でデジタルに音量を確保したい人。ファンタム電源の用意自体が要らなくなります。詳しくはSHURE MV7+の単体レビューで解説しています |
| audio-technica AT2020 | ¥13,200最安 | 静かな部屋があり、コンデンサーマイクの高感度で予算を抑えたい人 |
(SHURE SM7Bは2026.08.27、SHURE MV7+は2026.08.31、audio-technica AT2020は2026.09.07時点の楽天市場での実売価格)
分かれ目は「ゲイン不足をどこで解決するか」です。手持ちの機材か追加のブースターアンプで解決できるならSM7B、USB接続で完結させたいならMV7+、予算を抑えてコンデンサーマイクに切り替えるならAT2020、マイク単体でゲイン問題を閉じたいならSM7dB、という並びになります。
SM7BとSM7dBの価格差はおよそ¥23,000です。この差額で買っているのは音質の向上ではなく、Cloudlifterのようなブースターアンプの購入・配線・置き場所を省く手間です。既にゲイン十分な機材を持っている、あるいはブースターアンプの追加投資に抵抗がないなら、SM7Bを選んでその差額を他に回すほうが合理的です。
SM7dBの音質については、SM7Bと同一という評価でおおむね一致しています。Sound on Soundのレビューはプリアンプを無効化した状態のSM7dBについて、SM7Bとの音の違いを聞き分けられなかったと評しており、音そのものを変えたのではなく、その音を捉えやすくした製品だと位置づけています。Gearspaceのフォーラムでも、既に高ゲインのプリアンプ環境を持たない人にとって、外付けの機材を増やさずにゲインを確保できる点が支持されています。海外レビューでは、+18dBはコンデンサーマイク並みの入力レベルまで持ち上げるのに十分で、+28dBまで上げるとほぼクリップ寸前になるためポッドキャストなど静かな音源向け、という使い分けが紹介されています。
不満点として最も多いのは価格です。The Podcast Hostのレビューは、SM7Bより約100ドル高いことを踏まえ、予算に余裕のある愛好家向けの製品だと位置づけ、価格満足度を5段階中2.5と評価しています。また、ダイナミックマイクでありながら+48Vファンタム電源が動作の前提になっている点を、他の多くのダイナミックマイクとの違いとして指摘する声もあります。
実務的には、既にゲイン不足に悩んでいて追加機材を増やしたくない人には価格差を払う価値がありますが、ゲイン環境が既に整っている人にとっては、SM7Bとの差額に見合うメリットが小さくなります。
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評判の参照元: