ライブや配信用のダイナミックマイクを調べていると、SENNHEISERのe945に行き当たることがあります。同社のe935の上位に位置づけられる、スーパーカーディオイド(超単一指向性)のボーカルマイクです。
このマイクが選ばれる理由は3つあります。
1. カーディオイドより狭い指向性。 スーパーカーディオイドは一般的なカーディオイドよりもさらに正面以外の音を拒否する特性です。モニタースピーカーが近い小規模な会場や、複数の音源が近接する配信環境で、ハウリングや被り(かぶり)を抑えやすくなります。
2. 声の帯域に寄せた周波数特性。 40Hz〜18,000Hzという範囲で、後述のとおり中高域にプレゼンス(存在感)を持たせる作り込みがされています。声を前に出したい用途に向いた特性です。
3. ツアーユースに耐える堅牢さ。 オールメタルのハウジングに、カプセルを衝撃から守るショックマウントを内蔵しています。頻繁に持ち運び、手荒に扱われる現場を想定した作りです。
なお、この狭い指向性は良いことばかりではありません。マイクの正面から外れると音量が大きく落ちるため、動き回るタイプのパフォーマンスにはあまり向きません。この点は後述の「買わなくていい人」で扱います。
比較の軸を先に決めます。
まず数値を並べます。すべてSENNHEISER公式製品ページの記載です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方式 | ダイナミック型 |
| 指向性 | スーパーカーディオイド(超単一指向性) |
| 周波数特性 | 40Hz〜18,000Hz |
| 感度 | 2.0mV/Pa(1kHz、無負荷) |
| インピーダンス | 公称350Ω・最小終端インピーダンス1,000Ω |
| 出力端子 | 3ピンXLR |
| 質量・寸法 | 366g・直径47mm×長さ186mm |
| 保証 | 2年(グローバル) |
数字のままでは判断できないので、効いてくる項目を訳します。
指向性 スーパーカーディオイド — カーディオイド(単一指向性)よりもさらに正面以外の音を拒否する特性です。ただし拾える範囲が狭くなる分、マイクの正面からわずかに外れただけで音量や音質が変わりやすくなります。歌う位置が安定している人には有利ですが、動きながら歌う人には扱いにくさにつながります。
周波数特性 40Hz〜18,000Hz — 数値のレンジ自体は競合機とそれほど変わりませんが、後述のレビューによると中高域(3〜6kHz帯)と10kHz付近にプレゼンス(存在感)を持たせる持ち上げが確認されています。フラットな再現ではなく、声を前に出す方向に意図的に味付けされた特性です。
感度2.0mV/Pa — ダイナミックマイクとしては標準的な出力です。一般的なミキサーやオーディオインターフェイスのゲインで問題なく扱える水準で、RODE Procasterのように追加のゲインブースターを前提にする必要は薄いといえます。
質量366g — 同社のe835(285g)よりやや重めですが、ハンドヘルド型としては標準的な範囲に収まっています。
| ストア | 税込 | 状況 | 購入 |
|---|---|---|---|
| 楽天市場 | ¥28,600 | 2026.08.27 取得時点の実売価格(イケベ楽器楽天ショップ・国内正規品) | 楽天市場で見る |
| Amazon | リンク先で確認 | JAN 4006087094228 での検索結果を開きます | Amazonで見る |
| サウンドハウス | リンク先で確認 | 「SENNHEISER e945」での検索結果を開きます | サウンドハウスで見る |
同じ出品者から「箱チョイ傷アウトレット」表記の¥24,200の出品も見つかりましたが、これは訳あり品のため上の表からは除外しています。通常の新品出品は¥28,600〜¥33,000で推移しており、今回確認できた最安は決算セール中のイケベ楽器楽天ショップでした。価格は日々動きます。購入前に、表のボタンから最新の価格をご確認ください。
e945が唯一の正解ではありません。同じダイナミックマイクの中にも指向性や性格の異なる機種があります。
| 機種 | 税込 | 向いている人 |
|---|---|---|
| SENNHEISER e835 | ¥11,880最安 | もう少し予算を抑えつつ、同社のライブ用サウンドを試したい人 |
| SHURE SM58 | ¥15,950 | 定番の実績と情報量を優先し、まず1本を安く揃えたい人 |
| RODE Procaster | ¥36,000 | ライブより配信・ナレーション寄りで、放送局向けの作りを求める人 |
(価格はいずれも記事公開時点で確認した楽天市場での実売価格。e835は2026.08.26、SM58は2026.08.25、Procasterは2026.08.27に取得)
分かれ目は「指向性の狭さにどこまで投資するか」です。予算を抑えて同社のサウンドを試したいならe835、定番の実績を優先するならSM58、ライブではなく配信・ナレーション用途ならProcasterという並びになります。e945はその中で、ハウリング耐性と声の前に出る質感を最優先したい人のための一段上の選択肢です。
e945は同社のe935と並んでライブボーカル用ダイナミックマイクの上位機として知られ、海外のレビューやフォーラムでの言及が豊富です。Reddit上の意見を集計したredditrecsでは7件の評価が全て肯定的で、SHURE SM58と並べて比較した投稿では「SM58が見劣りする」という趣旨のコメントが複数見られます。ハウリングやかぶりの拒否性能についても、マルチトラックのライブ収録で「ボーカル用マイクの中でも被り除去に最も優れる部類」という評価が投稿されています。e935との比較記事では、e945のほうが中高域がクリアで声の輪郭が出やすいと評価される一方、正面から外れると拾いにくくなる分、動き回るパフォーマーにはe935のほうが向くという住み分けが繰り返し指摘されています。
一方、測定を伴うレビュー(audioreview.frieve.com)では見方が異なります。独自の周波数特性測定で3〜6kHz帯に約5dBの持ち上げ、10kHz付近にも追加のピークがあることを確認し、これは「主観的な声の存在感を、測定上の正確な再現より優先した意図的な味付け」だと分析しています。同レビューは総合評価を5点中3.0点とし、価格差の小さい下位機種e845と「実用上ほぼ同等の性能」だとして、価格に見合うかどうかには懐疑的な評価を示しています。つまり「ライブでの評判は良い」という声と、「測定上はフラットではなく、価格差ほどの差別化がない」という指摘が並存している状態です。
複数のレビューで共通しているのは、正面からの声を強調する味付けとハウリング耐性の高さです。実務的には、この持ち上げられた中高域の質感を好むかどうかが購入判断の分かれ目になり、フラットな再現を求めるなら下位機種との価格差も含めて比較検討する価値があります。
価格は楽天市場の商品検索から取得しました。取得日は各表に記載しています。
評判の参照元: