LEWITT LCT 640 TSの型番末尾「TS」はTwin Systemの略です。1インチの振動板を前後2枚持ち、それぞれの出力を独立して取り出せる設計になっています。
選ぶ理由は3つです。
1. 録音後に指向性を選び直せる。 前後2つの出力をそれぞれ別トラックに録っておけば、無料の付属プラグイン「Polarizer」を使って、録音が終わったあとにカーディオイドや無指向性などのパターンを選び直せます。マイクの向きや距離を録音時に完璧に決めきれなくても、後工程で調整できる余地が生まれます。
2. 1本でステレオ収録ができる。 前後の出力を左右に振り分ければ、1本のマイクでMS(ミッドサイド)ステレオのような収録が可能になります。
3. 通常のマルチパターンマイクとしても使える。 デュアル出力を使わない場合は、単一指向性・無指向性・双指向性など5パターンを切り替えられる、ごく普通の大口径コンデンサーマイクとして1系統で運用できます。
ただし2の機能を活かすには条件があります。次で説明します。
比較の軸を先に決めます。
すべてLEWITT公式サイトの記載です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 振動板 | 25.4mm(1インチ)・3ミクロン金蒸着マイラー |
| 指向性 | デュアル出力モード(後処理で選択)/マルチパターンモード(無指向性・ワイドカーディオイド・カーディオイド・スーパーカーディオイド・双指向性) |
| 周波数特性 | 20Hz〜20,000Hz |
| 感度 | 31.4mV/Pa(-30.1dBV/Pa) |
| 自己ノイズ | 10dB(A) |
| 最大入力音圧レベル | 134dB SPL(0.5%THD、減衰0dB時) |
| S/N比 | 84dB(A) |
| ダイナミックレンジ | 124dB(A) |
| パッド | 0/-6/-12/-18dB |
| ローカットフィルター | リニア/40Hz(12dB/oct)/80Hz(12dB/oct)/160Hz(6dB/oct) |
| 内部インピーダンス | 110Ω |
| 電源 | ファンタム電源48V±4V・消費電流5.1mA |
| コネクタ | 金メッキ3ピンXLR(メイン)+ミニ3ピンXLR(セカンダリ) |
| サイズ・重量 | 158×52×36mm・425g |
数字のままでは判断できないので、効いてくる項目を訳します。
自己ノイズ10dB(A) — 「静かな部屋で無音を録ってもサーというノイズがほとんど気にならない水準」です。同社のLCT 440 PURE(7dB(A))よりは高い数値ですが、大口径コンデンサーとしては十分に低い部類です。
最大入力音圧レベル134dB SPL(減衰0dB時) — パッドを使わない状態での耐入力です。パッドを段階的にかけることでさらに大きな音圧にも対応できますが、パッド使用時の具体的な数値は公式ページに明記がないため、ここでは触れません。
コネクタがメインXLR+ミニXLRの2系統 — デュアル出力モードの物理的な仕組みそのものです。メインの3ピンXLRから前面の信号を、側面のミニ3ピンXLRから背面の信号を、付属のTSアダプターケーブルで通常のXLRに変換して取り出します。
同梱物。 ショックマウント、マグネット式ポップフィルター、フォームウィンドスクリーン、TSアダプターケーブル、トランスポートバッグ、トランスポートケースが付属します。単体で揃えると数千円〜1万円台になる周辺機材が一式そろう構成です。
Polarizerプラグイン。 LEWITTが無償で提供するプラグインで、デュアル出力で録った2トラックを読み込み、DAW上で指向性パターンを選び直せます。録音時に指向性を決め切れなかった場合の保険としてだけでなく、同じ録音素材から複数パターンを書き出して比較する使い方もできます。
Perfect Match技術。 LEWITT公式によれば、同社の技術により2本のLCT 640 TSを組み合わせれば特性が揃ったマッチドペアとして扱えるとされています。ステレオ収録で2本使いする場合の個体差を気にしなくて済む設計です。
| ストア | 税込 | 状況 | 購入 |
|---|---|---|---|
| 楽天市場 | ¥147,400 | 2026.10.19 取得時点の実売価格 | 楽天市場で見る |
| Amazon | リンク先で確認 | JAN 4533940069562 での検索結果を開きます | Amazonで見る |
| サウンドハウス | リンク先で確認 | 「LEWITT LCT 640 TS」での検索結果を開きます | サウンドハウスで見る |
店舗による価格差が大きい機種です。2026.09.14時点で新品を確認できた範囲では¥123,200〜¥199,078に分かれており、上表は楽天市場の商品検索(型番・ブランド一致、中古2件を除外)で確認できた最安の新品価格を掲載しています。他の大半の店舗は¥147,400〜¥165,000前後に集中しています。購入前に、表のボタンから最新の価格をご確認ください。
LCT 640 TSが唯一の正解ではありません。目的が違えば答えも変わります。
| マイク | 税込 | 向いている人 |
|---|---|---|
| LEWITT LCT 440 PURE | ¥44,000最安 | デュアル出力は不要で、静けさを優先したい人。詳しくは単体レビュー |
| SE Electronics SE2200 | ¥50,050 | マルチパターンの定番機を、より抑えた価格で探したい人 |
| AKG C414 XLII | ¥132,800 | 同価格帯で、さらに定評のあるマルチパターン機と比較したい人 |
(LCT 440 PUREは2026.09.03、SE2200は2026.08.26、C414 XLIIは2026.08.26時点の楽天市場での実売価格)
分かれ目は「録音後に指向性を変える余地に価値を感じるか」です。デュアル出力が不要ならLCT 440 PUREやSE2200のほうが価格を抑えられます。LCT 640 TSとC414 XLIIはどちらもマルチパターン機として定評がありますが、後処理での指向性変更という一点でLCT 640 TSに独自性があります。
英語圏のレビューでは、音質と使い勝手の両面で評価が高い機種です。Sound on Soundは、2kHzあたりから14kHz付近にかけて緩やかに持ち上がるプレゼンスを持ちながら耳障りさが無く、大きな音の立ち上がりにも崩れなかったと評価しています。1系統の普通のマルチパターンマイクとしても使え、必要なときだけデュアル出力に切り替えられる点を、他のツイン出力マイクに対する実利として挙げています。MusicTechも色付けの少ない音で、比較したAKG C414 XLSより好ましく聞こえたとしています。MusicRadarは、5つの指向性と段階の多いパッド・ローカットを備え、価格に見合う以上の機能だとまとめています。
不満点も具体的に挙がっています。MusicRadarは、側面のミニXLR端子が小さく壊れやすいので、TSアダプターケーブルの抜き差しには注意が要ると指摘しています。Sound on Soundは、デュアル出力を持たない標準のLCT 640と比べて、最大SPLとダイナミックレンジがわずかに下がる点を唯一の弱点に挙げています。MusicTechは近接効果が出やすくローカットの設定に気を配る必要があるとし、録音後に指向性を変える機能が実際の制作でどこまで出番があるかは使い手次第だとも述べています。
実務的には、音質面の不安は薄い機種です。デュアル出力を常用するつもりがなく、マルチパターン機としての音に惹かれているのであれば、この機能への上乗せ分に価値があるかを一度考えてから選ぶのが確実です。
価格は楽天市場の商品検索から取得しました。取得日は表に記載しています。
評判の参照元: