ノイマンのカーディオイドマイクにはTLM 102という下位機がありますが、TLM 103は音の入り口(カプセル)にU 87由来の設計を持つ、1つ上のモデルです。理由は3つあります。
1. U 87のK67/87カプセルから派生したカプセルを採用している。 Neumann公式は、TLM 103のラージダイアフラムカプセルをU 87のK67/87カプセルから派生したものと説明しています。U 87が指向性を切り替えられるのに対し、TLM 103はカーディオイド専用です。
2. 自己ノイズが7dB-Aと、下位機TLM 102(12dB-A)より明確に静か。 感度も23mV/Paと高く、TLM 102(11mV/Pa)のほぼ2倍です。無音に近い環境でのナレーションや弾き語りで、ノイズの少なさがそのまま活きます。
3. 最大138dB SPLまで歪まずに受け止められる。 感度を落とすパッドのスイッチはありませんが、歪率0.5%の基準で138dB SPLまで対応しており、声を張るボーカルやアコースティック楽器でも上限に余裕があります。
ラージダイアフラムのコンデンサーマイクを選ぶとき、比較軸は主に3つです。
TLM 103は自己ノイズと感度を優先し、最大SPLでは下位機にわずかに譲るという、はっきりした特化型の機種です。
Neumann公式サイトの製品ページに記載された数値です(ニッケル・本体単体構成)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 指向性 | カーディオイド(単一指向性) |
| 周波数特性 | 20Hz〜20kHz |
| 感度(1kHz時) | 23 mV/Pa(-32.5dBV±1dB) |
| 定格インピーダンス | 50Ω |
| 定格負荷インピーダンス | 1kΩ |
| 自己ノイズ(CCIR) | 17.5 dB |
| 自己ノイズ(A特性) | 7 dB-A |
| S/N比(A特性、94dB SPL基準) | 87 dB |
| 最大音圧レベル(歪率0.5%時) | 138 dB |
| 最大出力電圧 | 13 dBu |
| 電源方式 | ファンタム電源 P48(48V±4V、消費電流3mA) |
| コネクタ | XLR3ピン(オス) |
| 寸法・重量 | 直径60mm・長さ132mm・約450g |
| 付属品(本体単体構成) | 本体、SG2スイベルマウント、木箱 |
数字だけでは判断しづらいので、効いてくる項目を訳します。
自己ノイズ7dB-A — マイク自体がどれだけ静かかを示す数値です。同じノイマンのTLM 102は12dB-Aで、その差は5dBあります。無音に近い部屋での弾き語りやナレーションでは、この差がノイズフロアの聞こえ方にそのまま反映されます。
感度23mV/Pa — 同じ音量に対してどれだけ大きな電気信号を出すかを示す数値です。TLM 102(11mV/Pa)のほぼ2倍で、プリアンプのゲインを上げすぎずに録れるぶん、プリアンプ側が持つノイズの影響も受けにくくなります。
最大音圧レベル138dB — 歪まずに受けられる音の大きさの上限です。かなり大きな数字ですが、TLM 102の144dB SPLと比べると6dB低く、至近距離の大音量楽器を録る頻度が高いなら、この差を考慮する必要があります。
付属品は本体単体構成。 楽天市場にはショックマウントEA1が付属する「Studio Set」や、2本セットの「Stereo Set」も並んでいます。上のスペックと後述の価格は本体単体(SG2スイベルマウント・木箱付属)のものです。カラーはニッケルとマットブラック(mt)の2色があり、価格差はありません。
U 87由来のカプセルと、5kHzから上のプレゼンスブースト。 公式によると、TLM 103のカプセルはU 87のK67/87カプセルから派生したものです。そのうえでU 87よりやや現代的な音づくりとして、5kHzから上に広いプレゼンスブースト(声の輪郭や明瞭さを担う帯域の持ち上げ)を持たせています。声が前に出やすくなる一方、声質によってはこの帯域がサ行の刺さりとして聞こえることがあり、後述のレビューでもその指摘が見られます。
スイッチを持たない設計。 TLM 102と同様、パッド・ローカット・指向性切り替えのいずれも本体にありません。ミキサー側のハイパスフィルターで低域対策をする前提の設計です。
カラー展開。 ニッケルとマットブラック(mt)の2色があり、いずれも本体単体・Studio Set・Mono Set・Stereo Setの構成ごとに用意されています。価格はカラーによる差がありません。
| ストア | 税込 | 状況 | 購入 |
|---|---|---|---|
| 楽天市場 | ¥201,960 | 2026.09.27 取得時点の実売価格(本体単体・ニッケル) | 楽天市場で見る |
| Amazon | リンク先で確認 | JAN 4006087084304 での検索結果を開きます | Amazonで見る |
| サウンドハウス | リンク先で確認 | 「NEUMANN TLM 103」での検索結果を開きます | サウンドハウスで見る |
価格は日々動きます。購入前に、表のボタンから最新の価格をご確認ください。この表は本体単体(ニッケル)の価格です。 マットブラック(mt)も同額で販売されています。ショックマウントEA1が付属する「Studio Set」(¥234,630前後〜)や、2本セットの「Stereo Set」は別SKUのため、今回の価格調査から除外しています。購入時はページ名に「Studio Set」「Stereo Set」「Mono Set」が含まれていないか必ず確認してください。
TLM 103が唯一の正解ではありません。予算や指向性の柔軟性で答えは変わります。
| マイク | 税込 | 向いている人 |
|---|---|---|
| NEUMANN TLM 102 | ¥112,860最安 | 自己ノイズ12dB-Aで妥協できるなら、ノイマンのブランドと基本設計を約半額で選びたい人。詳しくはTLM 102の単体レビューで解説しています |
| AKG C414 XLII | ¥132,800 | 9段階の指向性切り替えを1本で使い分けたい人。詳しくはC414 XLIIの単体レビューで解説しています |
| SHURE KSM44A | ¥166,000 | TLM 103に近い価格帯で、マルチパターンの柔軟性も欲しい人 |
(価格はいずれも2026.09.27時点の楽天市場での実売価格)
分かれ目は「自己ノイズの低さ」と「指向性の柔軟性」です。予算を抑えるならTLM 102、指向性を切り替えたいならC414 XLIIかKSM44A、無音に近い環境でのノイズの少なさとU 87由来のカプセルを優先するならTLM 103、という並びになります。
英国Sound on Soundの評価では、TLM 103は音の傾向・使い勝手ともにU87に近く、自己ノイズの低さと最大音圧の余裕で当時のU87Aiを上回ると評価されています。全体としては暖かく開放的な特性で、薄く神経質な音にはならないという評価です。一方で、低域の構造的な振動や風切り音を拾いやすいという指摘があり、エラスティックサスペンションとウインドスクリーンの併用が推奨されています。パッドやローカットの物理スイッチが無いため、対策はミキサー側のハイパスフィルターに頼る前提です。
Gearspaceのフォーラムでは、明るく張りのある特性が歯擦音(サ行の刺さり)として出やすいという指摘が複数見られ、特に声質の明るいボーカルでこの傾向が目立つとされています。マイクの位置を正面から少しずらすことで改善するという対処法も紹介されています。一方で、質の良いプリアンプと組み合わせると音に厚みが出て、ボーカル用として非常に満足しているという声もあり、組み合わせる機材や声質によって評価が分かれる構図です。
複数のソースで一致しているのは、自己ノイズの低さと基本的な音の温かさへの評価です。逆に意見が分かれるのは歯擦音の出やすさで、声質やマイキングによって印象が変わります。楽天のレビューはまだ確認できません(2026.09.27時点で0件)。
実務的には、マイクの正面を声から少しずらす、あるいはプリアンプとの組み合わせを見直すことで、歯擦音の指摘の多くは軽減できるという整理になります。
価格は楽天市場の商品検索から取得しました(2026.09.27時点)。alternatives表の価格も同日の楽天市場での実売価格です。
評判の参照元: