YAMAHA HSシリーズにはHS5・HS7・HS8というモニタースピーカーの並びのほかに、HS8Sというパワードサブウーファーがあります。HS8のペアで作業していて、それでも低域の判断に自信が持てないという段階になって初めて検討する機材です。
先に結論を言うと、HS8Sを足す理由は3つです。
1. HS8ペアだけでは判断できない帯域が追加できる。 HS8の再生周波数帯域は38Hz-30kHz(-10dB)です。HS8Sは22Hz-160Hzという、HS8の下限よりさらに低い帯域をカバーします。キックの胴鳴りやベースの一番下の基音を、モニター2本だけでは聞き取れない帯域まで確認できます。
2. 既存のモニター環境に合わせ込める。 150Wの専用パワーアンプに加え、LEVELコントロール、PHASEスイッチ(NORM./REV.)、HIGH CUT・LOW CUTコントロール(いずれも80-120Hzの範囲で可変)を備えています。HS8ペアの特性に合わせてクロスオーバー周波数と位相を手元で追い込める設計です。
3. 「色付けしない」思想がそのまま続く。 HS8Sも他のHSシリーズと同じく、低域を持ち上げて心地よく聞かせるための味付けをしていません。HS8ペアで作ってきた基準がそのまま低い帯域まで伸びるだけで、判断基準自体は変わりません。
ただし、HS8S単体で¥65,220というのは、モニター1本分に迫る追加投資です。設置スペースも300×350×389mm・12.5kgぶん増え、位相とクロスオーバーの調整という新しい手間も発生します。「なんとなく低域を強化したい」という理由だけで足すと、投資に見合わない可能性があります。
比較よりも先に、そもそも足す必要があるかどうかを3つの軸で確認します。
3つとも当てはまるなら、HS8Sは投資に見合う候補になります。1つでも当てはまらないなら、まずはHS8ペアの設置環境(壁からの距離や部屋の音響処理)を見直すほうが優先度は高くなります。
すべてYAMAHA公式ページの記載です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 形式 | バスレフ型パワードサブウーファー |
| 再生周波数帯域(-10dB) | 22Hz-160Hz |
| コンポーネント(LF) | 8インチコーン |
| 定格出力 | 150W(4Ω) |
| 入出力コネクター | 入力: XLR3-31 type(balanced)×2, Phone(balanced)×2 / 出力: XLR3-32 type(balanced)×2(L&R) |
| 電源電圧 | 100V, 50/60Hz |
| 消費電力 | 70W |
| コントロール | LEVEL、PHASE(NORM./REV.)、HIGH CUT(80-120Hz)、LOW CUT(80-120Hz)、LOW CUTスイッチ(ON/OFF) |
| 外形寸法 | 幅300mm×高さ350mm×奥行き389mm |
| 質量 | 12.5kg |
| 最大音圧レベル | 公式ページに記載なし(未確認) |
再生周波数帯域 22Hz-160Hz — HS8の下限38Hzよりさらに16Hz低い帯域までカバーします。人の耳では音程として聞き取りにくい帯域ですが、キックドラムの「体に響く」感触やベースの基音の輪郭は、この帯域にかなりの部分が乗っています。HS8ペアだけでは判断できなかった領域が、ここで初めて確認できます。
定格出力150W — HS8(トータル120W)よりさらに大きい出力です。8インチウーファー1発を専用に駆動するための数値で、HS8ペアの負荷とは別に低域専用のアンプを持たせることで、モニター側の余裕も確保する設計になっています。
質量12.5kg・幅300×高さ350×奥行き389mm — HS8(1本10.2kg)よりひと回り大きく重い機材です。HS8ペアの足元、あるいは専用の設置スペースを新たに用意する前提のサイズです。
最大音圧レベルが未確認 — HS5・HS7・HS8と同様、HS8Sも公式ページに最大音圧レベルの記載がありません。断定できる公式数値がないため、ここでは「未確認」とだけ記載します。
HS8Sの背面には3種類のコントロールがあり、これがHS8ペアとの組み合わせを左右します。
LEVELコントロール。 サブウーファー側の音量を単独で調整します。HS8ペアの音量に対してどれだけ低域を足すかを決める、いちばん基本的な調整です。上げすぎるとキックやベースだけが不自然に前に出て、下げすぎると足した意味がなくなります。
PHASEスイッチ(NORM./REV.)。 HS8Sから出る低域の位相を反転させるスイッチです。設置場所によってはHS8ペアの低域と打ち消し合い、かえって低域が痩せて聞こえることがあります。NORM.とREV.を切り替えて、低域がいちばん厚く聞こえる側を選びます。
HIGH CUT・LOW CUTコントロール(80-120Hz)。 HIGH CUTはHS8Sが受け持つ上限、LOW CUTはHS8ペア側が受け持つ下限を、それぞれ80-120Hzの範囲で調整します。この2つを詰めることで、HS8SとHS8ペアの帯域が重なりすぎたり隙間が空いたりするのを防ぎます。
3つのコントロールに共通するのは、「足せば自動的に良くなる」機材ではないという点です。設置場所ごとに追い込む前提の機材だと理解しておくと、導入後に迷いません。
HS8Sは1本単位の販売が基本で、HS8とのセット・ケーブル同梱品とは別価格です。ここでは単品(1本)の価格のみを掲載しています。
| 販売形態 | ストア | 税込 | 状況 | 購入 |
|---|---|---|---|---|
| 単品(1本) | 楽天市場 | ¥65,220 | 2026.09.14 取得時点の実売価格(ワタナベ楽器) | 楽天市場で見る |
| — | Amazon | リンク先で確認 | JAN 4957812533140 での検索結果を開きます | Amazonで見る |
| — | サウンドハウス | リンク先で確認 | 「YAMAHA HS8S」での検索結果を開きます | サウンドハウスで見る |
価格は日々動きます。購入前に、表のボタンから最新の価格をご確認ください。HS8B・HS7Bとのセット品やケーブル同梱品は、ここに載せた単品価格より高くなります。
サブウーファーを足すこと自体を決めたなら、他社の8-10インチクラスとも比べておきます。
| 機種 | 税込(1本) | 向いている人 |
|---|---|---|
| KRK S10.4 | ¥88,000最安 | 低域の量感そのものを重視したい人 |
| ADAM AUDIO T10S | ¥90,838 | モニター側もADAM系で統一している人 |
| JBL LSR310S | ¥94,908 | JBL系のモニターと組み合わせたい人 |
(価格はいずれも2026.09.12時点の楽天市場での実売価格、1本あたり)
3台ともHS8Sより高い価格帯です。HS8Sは「色付けしない」思想を保ったまま最も抑えた価格で低域を追加できる選択肢で、すでにHS8ペアを使っている人にとっては音の傾向を揃えやすいという利点もあります。低域の量感そのものを求めるならKRK、モニター側のブランドを揃えたいならADAMかJBL、という並びになります。
HS8Sについては、HS8ペアに足す価値があったという声と、期待したほどではなかったという声の両方がGearspaceのフォーラムで見られます。ある投稿者は、HS7からHS8Sに足し替えたことで「もっと早くやればよかった」と述べ、最終的なミックス判断がしやすくなったと評価しています。一方で別の投稿者は、HS8ペア単体でも30〜35Hzあたりまでは聞こえているとしたうえで、実際にHS8Sを導入しても「低域はまだ物足りず、音量を上げても質感が良くない」と不満を述べています。
設置・調整の難しさを指摘する声も複数あります。位相の扱いが難しく、設置位置がずれると効果が出にくいこと、クロスオーバー周波数を正しく設定するにはSPLメーター等での確認が望ましいことが繰り返し挙げられています。あるスレッドでは、低域の物足りなさの原因がHS8Sの有無ではなく、部屋自体の音響未処理にある可能性も指摘されており、サブウーファーを足す前に部屋の環境を疑うべきだという意見も見られます。
実務的には、HS8ペアの設置と部屋の音響処理をすでに詰めたうえでなお低域の判断に迷う場合に効果が出やすく、そうでない場合は導入しても不満が残りやすい機材だと言えます。
価格は楽天市場の商品検索から取得しました。取得日は各表に記載しています。
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