
オーディオインターフェイスを調べ始めると、ほぼ確実にこの機種にぶつかります。Focusrite の Scarlett 2i2 です。4th Gen という名前のとおり、4世代にわたって作り替えられてきました。
長く売れ続ける機材には、たいてい理由があります。この機種の場合は3つです。
1. マイクを選ばないゲインの余裕。 マイク入力のゲイン範囲は69dBです。ゲインとは、マイクが拾った小さな電気信号を持ち上げる量のことです。この数字が大きいほど、出力の小さいマイクでも音量不足に困りません。宅録で使われる安価なダイナミックマイクは、まさに「大きく持ち上げる前提」の機材です。
2. レベル合わせを機械に任せられる。 Auto Gain は10秒間の演奏を解析して適正なゲインを自動で決めます。Clip Safe は音が割れそうになったときにゲインを自動で下げます。初心者が最初に必ずつまずく「ツマミをどこまで回せばいいのか」が、押しボタン1つに置き換わっています。
3. 困ったときに先例がある。 世代を重ねた定番機なので、設定でつまずいたときの解決例が大量に存在します。スペック表には載りませんが、初めての1台では大きな価値です。
比較の軸を先に決めます。初めてのオーディオインターフェイスに必要な条件は、実はそう多くありません。
2i2 はこの3つを全部満たします。話としてはそれだけです。
まず数値を並べます。すべて Focusrite 公式ページの記載です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 入出力 | 2 in / 2 out(マイク2・楽器2・ライン2・ヘッドホン1) |
| 解像度 | 24bit / 192kHz |
| ダイナミックレンジ | 120dB |
| ゲイン範囲 | マイク69dB/楽器62dB |
| 接続・電源 | USB Type-C・バスパワー(900mA) |
| サイズ・重量 | 180×117×47.5mm・0.595kg |
数字のままでは判断できないので、効いてくる4項目だけ訳します。
ゲイン範囲 マイク69dB — 「小さい声で歌っても、マイクを口から離しても、音量が足りなくならない余裕」のことです。出力の小さいダイナミックマイクは、大きく増幅する前提で設計されています。ゲインの上限が低い機材だと、ツマミを最大まで回してもまだ小さい、という事態が起こります。69dBはその心配がほぼ要らない水準です。
ダイナミックレンジ 120dB — 「扱える一番小さい音と一番大きい音の差」です。数字が大きいほど、小さい音を録るときに機材自体のノイズ(サーというあの音)が目立ちません。ただし宅録では、エアコンや外を走る車の音のほうが先に問題になります。足りていれば十分な項目で、上を追ってもリターンは小さめです。
24bit / 192kHz — 音をどれだけ細かく記録するかの上限です。実際の制作では 24bit / 48kHz で作業する場面が大半で、192kHz は余裕として付いていると考えて構いません。ここの数字だけで機種を選ぶ必要はありません。
バスパワー 900mA — 電源アダプターが要らず、USBケーブル1本で動きます。ただし900mAは小さくない数字です。電力の弱いUSBハブを挟むと動作が不安定になる恐れがあるため、パソコン本体の端子に直接つなぐのが基本です。
4th Gen で押し出されている機能は3つです。名前だけでは何が起きるのか分からないので、公式の説明を確認しました。
Auto Gain — 10秒で適正レベルを決める。 ボタンを押して10秒間、いつもの音量で歌うか弾くかします。その10秒を解析して適正なゲインを自動で設定します。準備が「マイクに向かって10秒声を出す」に置き換わるので、録り始めるまでの手間が大きく減ります。
Clip Safe — 音割れの直前で自動的に下げる。 入力レベルを1秒あたり最大96,000回監視し、クリップ(音が割れること)の危険を検知するとゲインを自動で下げます。歌い出しは静かでサビで急に大きくなる素材では、いいテイクが音割れ1回で台無しになります。その事故を減らすための仕組みです。
Air — 高域の質感を足す2段のモード。 Focusrite の ISA というマイクプリアンプの音を再現するモードです。1段目の Presence はアナログ回路で高域を持ち上げ、声や楽器を前に出します。2段目の Harmonic Drive は DSP(デジタル処理)で中域のハーモニクスを加え、音の輪郭を強めます。常時オンにする機能ではなく、録った音が奥に引っ込んで聞こえるときに試す使い方が合います。
この3つは要するに、録音を始めるまでの手間と、録り直しの回数を減らすための機能です。音を良くする機能ではなく失敗を減らす機能だと理解しておくと、期待値がずれません。
| ストア | 税込 | 状況 | 購入 |
|---|---|---|---|
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価格は日々動きます。購入前に、表のボタンから最新の価格をご確認ください。
2i2 が唯一の正解ではありません。目的が違えば答えも変わります。
| 機種 | 税込 | 向いている人 |
|---|---|---|
| YAMAHA AG03MK2 | ¥25,300 | 録音より配信が主目的の人。ミキサー型で、配信の運用を1台にまとめたい向き |
| M-Audio M-Track Duo | ¥7,700 | 入力2つは欲しいが、1万円以下に抑えたい人 |
| BEHRINGER UM2 | ¥7,150 | まず録れる状態を最短で作りたい人。予算が最優先 |
(価格はいずれも 2026.08.25 時点の楽天市場での実売価格)
分かれ目は単純です。配信が主目的なら AG03MK2、とにかく安く始めたいなら UM2 か M-Track Duo、録音の質と操作の楽さを両立させたいなら 2i2、という並びになります。
価格差だけを見ると、UM2 と 2i2 の間には2万円以上の開きがあります。この差で何を買っているかというと、ゲインの余裕と、Auto Gain / Clip Safe による失敗の減少です。録音の頻度が高い人ほど、この差は回収しやすくなります。逆に、月に1回触るかどうかという使い方なら、安いほうから始めるのも十分に合理的です。
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